腰痛の原因とは
腰痛の原因は身体の構造的な問題、または筋肉などの組織の障害であることが大半です。もちろん組織の障害として椎間板のダメージ、神経根の圧迫や関節の間違った動きも含まれています。その中でも一番多い腰痛の原因は、筋肉や靭帯が過度に引っ張られることで損傷し炎症を起こすことです。筋肉や靭帯は突然損傷を起こすこともあれば、繰り返し同じ動作をすることで徐々に起こることもあります。特に以下のような状況で損傷は起こりやすいです。
・重いものを持ち上げたり、持った状態で身体を捻るなどの動作を行なった時。
・転倒など突然腰部に強い負荷がかかった時。
・長い期間不良姿勢でいること。
・スポーツなど運動時に起こる怪我。
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慢性腰痛の原因とは
痛みが3ヶ月以上続く場合は慢性腰痛として定義され、人間が本来備えている回復力(自然治癒力)を超えている状態だということができます。特に慢性腰痛の場合椎間板、椎間関節や神経根などに問題が起こっていることがほとんどです。以下のものが主要な原因です。
・腰椎椎間板ヘルニア:「髄核」と呼ばれるジェル状の組織が周りを取り囲む繊維輪を破り、近くの神経根を圧迫することで起こります。椎間板はタンパク質で構成されており、それが神経根に触れることで圧迫と同時に炎症を起こし神経痛となります。髄核を取り囲む繊維輪の外側は神経組織が入っているため、繊維輪を破るようなヘルニアの場合痛み方も強くなります。『腰椎椎間板ヘルニアについてはコチラ』
・椎間板変性:赤ちゃんの椎間板は水分が多くとても健康的ですが、年齢を重ねるにつれて水分量は減り薄くなっていきます。椎間板が水分を失っていくと荷重への耐久性も弱くなり、支えきれない重さが髄核の外を囲う繊維輪に加わり椎間板ヘルニアを起こしやすい環境になっていきます。また椎間板自体も形が崩れ、腰部脊柱管狭窄症の要因にも繋がっていきます。
・椎間関節機能障害:椎間関節は腰椎の椎体1つに対して左右2つずつあり、それぞれの関節面には軟骨が存在し、その周りを関節包によって守られています。椎間関節は神経が豊富に存在するため、関節自体が痛みを感じます。
・仙腸関節機能障害:仙腸関節は左右の腸骨と仙骨によって骨盤を構成する関節です。身体にかかる荷重を支えるのに大変重要なため、靭帯などの結合組織も豊富で関節自体の動きもそれほど多くありません。仙腸関節が上手に働かなくなったり炎症を起こすと、痛みを引き起こします。『仙腸関節機能障害についてはコチラ』
・脊柱管狭窄症:神経根が存在する脊柱管が狭くなる(狭窄)ことで痛みを引き起こします。狭窄は脊柱管の中心部または椎弓付近で起こり1つの椎体の場合や多椎間にまたがることもあります。『腰部脊柱管狭窄についてはコチラ』
・脊椎すべり症:下の椎体に対して何らかの原因で上の椎体が前方に移動してしまう状態です。脊椎すべり症の原因で多いのは椎弓を形成するの関節突起患部の欠損や骨折と、加齢などによる退行性変化により起こる構造的な不安定性です。痛みは腰部の不安定性と神経の圧迫によって起こります。「脊椎すべり症についてはコチラ」
・変形性関節症:加齢などの退行性変化により椎間板やついかん関節がすり減り摩耗していく状態のことです。その結果痛みや炎症起こしたり、場合によっては脊柱管狭窄症の原因にもつながります。
・骨の変形:脊柱側湾症や後彎症などの状態のことです。脊柱のバランスが崩れやすくなるので腰痛になりやすく、椎間板や椎間関節、仙腸関節機能障害などを引き起こすこともあります。
外傷:背骨の骨折や脱臼により痛みを起こします。高いところからの転倒や交通事故などによる腰痛は専門家の受診が必要となります。
・圧迫骨折:背骨の椎体部が何らかの理由により骨折を起こすことで痛みを起こします。圧迫骨折は高齢の女性に多く骨の密度が低下する骨粗鬆症が原因で起こるためです。
上で述べたような状態が必ずしも腰痛を引き起こすとは限りません。例えばレントゲン画像などで椎間板変性や骨の変性が見られたとしても、痛みを訴えない方もいます。
腰痛の痛みの種類
外傷やぎっくり腰などの急性腰痛をきっかけとして慢性の腰痛になる方は少なくありません。早い段階で適切に痛みを緩和することができると、その後慢腰痛になるリスクを減らすことができます。痛みは大きく急性腰痛、慢性腰痛、ニューロパシックペインの3種類に分けることができます。
・急性腰痛:少なくとも3ヶ月以内に治る腰痛、または筋肉などが損傷起こしたものを急性腰痛と呼び、鋭く刺すような強い痛みが特徴です。急性腰痛が長引くと周りの組織にも影響が及び、慢性腰痛のリスクが高まります。特に痛めた組織が回復しても、痛みの信号が脊髄を通り脳に届き痛みを記憶すると慢性化しやすくなります。痛みを記憶しやすくなる原因としては、適切なリハビリ不足、痛みに対する恐怖や不安などが影響します。
・慢性腰痛:3ヶ月を超えても続く痛みや、筋肉などの組織が回復する期間を超えても続く痛みのことを慢性腰痛と呼びます。慢性腰痛の特徴は痛んだ組織や関節自体が痛みを感じるのではなく、痛みを記憶した脳と深い関わりがあると呼ばれいます。実際、慢性腰痛に関してはまだ分かっていないことも多いのが実際のところです。
・ニューロパシックペイン:損傷した筋肉組織などが完全に治癒していたとしても、神経システムが痛みの信号を脳に送ることで痛いという感覚を作ってしまうことをニューロパシックペインと呼びます。ニューロパシックペインは慢性痛の一つと呼ぶことができますが、慢性的な筋骨格症状の痛みよりも鋭く刺すような痛みを感じます。また人によっては神経痛と共に筋力の弱化なども起こります。感覚神経や運動神経が損傷することでその付近にある神経に影響を出すためだと考えられています。またNSAIDsなどの痛み止めも効果ないのも特徴です。
腰痛の症状と評価
腰痛では症状の特徴を把握することができると、正確な評価と効果的な施術につばげることができます。腰痛は以下のような症状が1つまたは2つ以上が重なって起こります。
・重だるく疼く痛み:腰の痛みは「焼けるような」や「刺すような」というよりは重だるく疼く痛みと表現されることが多いです。この痛みは筋肉が痙攣を起こした時に一緒に感じやすいのが特徴で、関節可動域の減少も見られます。
・お尻や足まで広がる痛み:腰部に加えてお尻や足に向かい刺すような痛みや痺れを感じることを坐骨神経痛と呼びます。坐骨神経痛は坐骨神経への圧迫や刺激によって起こり、大抵の場合片側に起こります。(坐骨神経痛についてはコチラ)
・長時間座った後での痛み:長時間同じ姿勢で座っていると、椎間板への圧力が高まり痛みを引き起こします。この痛みの特徴は歩いたりストレッチをすると痛みが和らぐことです。
・姿勢によって良くなる痛み:姿勢によって痛み方が変わるなどの情報も、腰痛の評価に重要になります。例えば、腰部脊柱管狭窄症などでは歩いていると症状が強くなりますが、前屈みになり休むと症状が落ち着きやすいなどの特徴があります。
・起床時に腰が痛く、動いていると楽になってくる:腰痛を抱える多くの方が起床時が一番辛いと良く訴えます。この場合は睡眠によって長時間同じ姿勢でいたことで、筋肉や関節に硬さが生まれたことや血液の循環が悪くなったこと、枕やマットレスなど寝具の問題が考えられます。
もちろんこれらは主な症状でありこれ以外にも腰痛の原因は多く存在します。特に腰痛の場合は個々の生活や運動習慣、また精神的なストレスなども大きく関わると言えます。
腰椎の部位によっての症状の違い
脊柱の構造上腰椎は体重を支える役割があるため他の場所に比べ大きな構造になっており、その影響で椎体は変性や損傷を起こしやすくなっています。それぞれの腰椎の分節で影響が出たときは次のような症状が見られます。
・腰椎3〜4番間:太ももへの鋭い痛みや痺れなどを感じやすいです。放散痛は膝やスネの方まで感じることがありますが稀です。
・腰椎4〜5番間:この部分は坐骨神経痛の痛みとして知られている場所で、太ももの裏側に痛みを感じ、稀にふくらはぎの方まで痛みが及びます。
・腰椎5〜仙椎1番:腰椎5番と仙骨が繋がる部分はいくつかの関節で安定と柔軟性が作られています。その中の一つが腰仙関節であり、この関節によってお尻を横に振ることができます。もう一つの関節が仙腸関節であり、骨盤を安定させ、上半身の体重を支えるのに重要な役割を担っています。
この部分の痛みは多くの場合神経根の痛みからきます。また、坐骨神経痛の症状でも知られています。
障害を受けた腰部の場所によってどの神経根が影響を受けているかが決まります。放散痛を感じている場所を正確に特定することができれば、腰痛の原因を評価することが容易となります。
腰椎に対する運動療法
運動療法は腰痛にとって非常に効果的になります。ここではストレッチと簡単な筋力トレーニングを紹介します。
ストレッチ:多くの方で腰椎、臀部、足に対するストレッチは有効な方法となります。なぜならこれらの筋肉は上半身の重さを支えており、柔軟性があると怪我を予防しやすくなるからです。最初は簡単なストレッチを20〜30秒ほどから始めるのが一般的であり、痛みを感じる場合はすぐに中止することが勧められます。私が腰痛の方に最初おすすめするストレッチは膝を駆け込むストレッチです。やり方は仰向けになった状態で片方の膝を両手で抱え、胸の方に引き寄せます。このストレッチでは臀筋群や梨状筋のストレッチを行うことができます。
トレーニング:トレーニングを行う目的は腰や骨盤部の安定を作るためです。それにより重力などのストレスや姿勢を維持しやすくなるため、腰痛を軽減しやすくなります。おすすめのトレーニングは「ペルビックチルト」という骨盤を安定させるトレーニングです。
床に仰向けで横になります。膝を直角に曲げ、手は身体に沿わせて横に起きます。骨盤を地面の方行に押していくのですが、その際に自分のおへそを背骨の方に向かって引っ張る様なイメージで行うと上手く行きやすいです。骨盤がうまく動かせると、背中と床の間にある隙間がなくなり、骨盤が胸の方へ動くのがわかると思います。ポイントとしては骨盤を床に近づけるときに、足の力をできるだけ使わずに行うことです。
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