· 

坐骨神経痛について

坐骨神経痛の概要

 

 「坐骨神経痛」は坐骨神経の炎症や圧迫によって足に痛みや痺れを引き起こす総称として使われています。坐骨神経は腰部から始まり臀部の深い部分を走行し、足の方向へ向かっていきます。

坐骨神経痛の症状

 

 坐骨神経痛の痛みや痺れは基本的に、太い坐骨神経が走行する場所で起こります。特徴的な症状としては以下のようなものが当てはまります。

 

・痛み:坐骨神経の痛みを表現するときに「焼けるような」「鋭く刺すような」という表現がよく使われます。また痛みは腰部、臀部、太ももから足先にかけての全体に感じ、影響されている神経の部分によって症状が強く感じる場所が変化します。

 

・痺れ:多くの場合痛みと同時に痺れも感じ、足の後面に感じます。ちくちく刺すような感じや筋力の低下も起こることがあります。

 

・片側にだけ感じる:ほとんどの場合片側のみに症状を感じます。症状が出ている側の足は反対側に比べ重だるく感じることが多いです。稀ではありますが、両側に出ることもあります。

 

・症状がが強くなるまたは和らぐ姿勢:坐骨神経痛の症状が強くなるときは、座る、立ち上がろうとする、前屈みになる、腰をひねる、咳をするなどが代表的です。反対に和らぐのは、歩いているときやホットパックで骨盤の後ろ側を温めたときな度になります。

 

 ただし勘違いしてはいけないのは、足の痺れがあるからと言って全て坐骨神経痛、全て坐骨神経痛ではないということです。あくまで坐骨神経の炎症や圧迫によって出た症状だけが坐骨神経痛となります。

それぞれの神経根での特徴的な症状

 

 坐骨神経痛は多くの場合、腰椎4番、5番と仙椎1番の間で起こります。それぞれの神経根で障害された時の症状の出方は以下のようになります。

 

・腰椎4番の場合:痛みは股関節、太もも、膝とふくらはぎの内側で感じ、感覚はふくらはぎの内側で消失しやすいです。太ももと股関節の筋肉で弱化が起きやすく、膝蓋腱反射に異常が見られることがあります。

 

・腰椎5番の場合:痛みはお尻と太ももの外側で感じ、感覚は母趾付近で消失しやすいです。お尻と足の筋肉で弱化が起きやすく、足首を背屈することが困難になりやすいです。

 

・仙椎1番の場合:痛みはお尻、ふくらはぎと足首の外側に感じやすいです。感覚は足首の外側、特に第3〜5趾で消失しやすいです。爪先立ちで歩くことが難しくなります。アキレス腱反射に異常が見られることがあります。

坐骨神経のイメージ

坐骨神経痛と良く一緒に見られる状態

 

 坐骨神経痛は下記のような医学的な症状伴って出ることが多いです。

 

腰痛椎間板ヘルニア

腰部脊柱管狭窄症

・腰椎椎間板の退行性変化 *加齢に伴う椎体や椎間板の構造的な変性のこと。

脊椎すべり症

・筋肉のスパズム(筋肉の痙攣)*腰椎・骨盤の炎症を含む。

仙腸関節の機能障害

*稀に腫瘍や血栓などが坐骨神経痛を引き起こすことがある。

坐骨神経と坐骨神経痛の解剖学

 

 坐骨神経は仙骨と腰椎の計5つの神経根から出る神経が一束になり形成され、人体では一番太くて長い神経になります。坐骨神経は左右それぞれ一本ずつあり、足先の方に向かっていきます。ここで、より詳しく坐骨神経の解剖学を見ていきます。

 

・坐骨神経の始まり:第4腰椎の脊髄神経からですが、先ほども述べたように第4腰椎から第3仙椎の神経根が一束になって坐骨神経は形成されています。束になった神経束の直径は約2cmほどにもなります。

 

・坐骨神経の走行:最初に大坐骨切痕から骨盤を抜け、梨状筋の下側を通ります。それから太ももの後面を通り足先までつながります。

 

・坐骨神経枝:坐骨神経はちょうど膝の裏側で脛骨神経と総腓骨神経の二つ枝分かれします。脛骨神経はそのまま足の足底までいき、足の後面の感覚や運動神経を司ります。反対に総腓骨神経は腓骨頭の下側から前方に入り、足の前面の神経を司ります。

 

 坐骨神経の症状はほとんどの場合どこの神経で影響受けているかで症状が変化します。例えば腰椎5番の神経が影響を受けると太ももの裏側に痛みを感じやすく、足首と母趾を上げるのが難しくなります。

どのように坐骨神経痛は進行するか

 

 基本的に坐骨神経痛は外傷などの怪我を理由に起こるということは少なく、長い期間かけて進行していきます。坐骨神経痛は40代の方に一番多く、トラックの運転手や機械操縦など身体を酷使する職業の人に多く見られ、動作では身体を前や横に曲げる動きが多い人の方がなりやすい傾向があります。多くのの坐骨神経痛経験者は平均して4〜6週間以内に症状が改善してしまうことがほとんどで、強い神経症状が伴う人は回復が遅い傾向があります。約3分の1の人は1年ぐらい何らかの症状を感じていることが多く、あまりにも痛みや神経痛が強いケースだと手術も選択肢に入れられます。

深刻な坐骨神経痛になってしまったら

 

 坐骨神経痛のいくつかの症状は馬尾症候群や脊髄の腫瘍など、重大な病気が隠れているケースも考えられます。次のような症状がある場合は早急な病院の受診が必要となります。

 

・進行性の神経症状:筋力の低下など

・両足に症状が出ている場合

・排尿・排便障害

 

 また、事故後の後遺症や神経痛が熱や食欲減退などと一緒に起こる場合も早急な病院の受診お勧めします。