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下位交差症候群

下位交差症候群とは

 

 日々デスクワークなどで長時間椅子に座っていると、身体のバランスは崩れやすくなります。最近では長時間の座り姿勢が身体に悪影響を与えるというニュースも多く見かけるようになり、現代人の大きな問題となっています。私たちの業界では、「下位交差症候群」と呼ばれる姿勢が及ぼす特徴的な筋肉の緊張と弱化のパターンがあります。交差とは過剰に緊張している筋肉と、働きが抑制されている筋肉が体をクロスするように起こるためこの名前がつきました。今回はこの下位交差症候群ついての特徴、施術計画、簡単なエクササイズをお伝えしたいと思います。

下位交差症候群の特徴

 

 上位交差症候群と同じように、下位交差症候群には特徴的なパターンがありそれが腰椎、骨盤、股関節の安定をもたらす筋肉に影響を与えます。どの部分に一番影響が出ているのかは、ひとりひとりの骨格構造によって違ってきます。この状態を悪化させる原因は長時間の座位と立位での不良姿勢です。下位交差症候群によって特定の筋肉が過緊張と弱化することで、腰痛などの痛みを感じるようになりますが、痛みに関しては不良姿勢により背骨にある椎間関節の可動性が落ち、神経に影響を与えたことが要因となります。

 

下位交差症候群で過緊張や短縮を起こしやすいのは、脊柱起立筋、腸腰筋、大腿直筋などの腰椎・骨盤を前傾させる筋肉です。反対に弱化し働きが悪くなるのは、腹直筋、大臀筋、ハムストリングなどの骨盤を後傾させる筋肉になります。つまり、骨盤は前傾して腰椎も前湾が強くなる「反り腰」の姿勢が特徴になります。

評価の仕方

 

 下位交差症候群のほとんどの方は腰痛を経験しており、長時間立っていると痛みが強くなり身体を曲げると減少します。これは同じ姿勢で立っていることで、腰椎・骨盤の前傾が強くなることが原因です。基本的に神経症状は起きないので臀部から下肢に向かう放散痛などはありません。もし足に痺れが出るようだと、梨状筋の緊張を伴った”坐骨神経痛”の可能性が考えられます。足を伸ばした状態で仰向けで寝たときに腰に痛みや違和感があり、膝を立てると楽になるのも下位交差症候群の特徴の一つです。

 

また、下位交差症候群の評価では次のようなことを確認しながら見ていきます。

・術者によるサポートがある状態での身体の可動性(P-ROM)→目立った所見が出ないことがほとんどです。

・患者さん自身による身体の可動性(A-ROM)→体幹伸展時に痛みが強くなり、屈曲時に痛みが和らぎやすいです。

・筋力検査(MMT)→腸腰筋、大臀筋など影響のある筋肉で弱化が見られます。

・整形学検査→ケンプテスト、トーマステスト、アダムステスト

 

これらの検査を行い、その方が一番ケアが必要な場所を判断し施術計画を作っていきます。

効果的なトレーニング

 

 腰椎部の脊柱起立筋が緊張を起こしやすくなるのは、腸腰筋と大腿四頭筋が骨盤を過剰に前傾させると同時に、腹筋群と臀筋群がうまく働かず骨盤を後傾に保つことができないのが一番の理由です。それを考えると、単純に「腰部の筋肉をストレッチすればいいのでは」と思うかもしれませんが、私の経験では腰部にある起立筋は伸ばしすぎることは逆に腰の安定性を奪う可能性があると考えます。そこで私が考える下位交差症候群の改善で重要なのは、骨盤の後傾位を保つための筋力をつけることと、腰椎ではなく、胸椎の動きを改善させることになります。

 

 

 これからお伝えする運動は固まってしまっている腸腰筋に対して行う運動になります。左の図は腸腰筋をストレッチするので良く使われる運動です。しかし、多くの方が正しくできていないと感じています。というのも、股関節の前側を伸ばす際に、骨盤も一緒に前傾してしまっている人が多くいるからです。そのように行ってしまうと腸腰筋は伸びるのではなく縮まってしまうからです。なので左の下の図のように骨盤が前傾しないように維持することが腸腰筋のストレッチには重要となります。これがしっかり行えていると、股関節の腸腰筋が付着する場所がストレッチされているのを感じることができます。

 当院では、下位交差症候群の方にはこの運動を正しくやってもらうことから始めていきます。


施術計画


 適切な関節の柔軟性を回復させるために、股関節、骨盤、腰椎に対して脊柱マニピュレーションやアジャストメント(調整)が必要となります。正しい調整が行うことが出来れば、早い段階で変化が見込みやすいのが下位交差症候群の特徴でもあります。調整に加えて過緊張を起こしている筋肉に対してリリースやストレッチ、弱化している場所には正しく使えるような筋肉の再教育が必要となります。
 施術効果を最大限引き出すためにはご自身の努力に加え、施術者の知識と経験値が重要な要素となります。当院では下位交差症候群の方を数多く見てきた経験があります。もし、お悩みであれば一度ご相談下さい。